外資系メーカーに勤めるYoichiro Iidaさんは、UWC ISAK Japanの教育プログラムづくりにプロボノとして携わる機会を得ました。そこで出会った人たちの情熱に力をもらい、自分にも変化を起こせると気づいたといいます。この経験をきっかけに、本業でも大きな新しい挑戦ができると考えるようになりました。経営コンサルタントとしての経験を持つIidaさんは、UWC ISAKのプロジェクトに大きく貢献しました。当時について尋ねると、才能と熱意にあふれる人たちと共通の目標に向かって働けたことを、生き生きと語ってくれました。

プロフィール
| 氏名 | Yoichiro Iida |
| 職業・所属 | 外資系メーカーの管理職(前職は経営コンサルタント) |
| 先生になるなら | 学ぶ楽しさを伝える歴史の先生 |
| つくりたい理想の学校 | 未来のリーダーを輩出する、松下村塾のような学校 |
| 仕事のスタイル | 論理的で、主張がはっきりしていると言われる |
| 子どもの頃の夢 | 小学生の頃は建築家、中学生の頃は大学教授になりたかった |
UWC ISAKの戦略的プロジェクトを支える
Iidaさんは、UWC ISAKの画期的なオンライン・プログラム「ISAKx」の立ち上げで中心的な役割を果たしました。大きな期待がかかったこのプログラムは、14〜18歳の生徒が週末を通してUWC ISAKならではの教育の核心に触れることを目指したものです。Iidaさんは、HatchEduの教育プロボノコースに参加するほかの2人とともに2020年6月にプロジェクトに加わり、同年9月の公開に向けて急ピッチで準備を進めました。厳しい締め切りの中でプロジェクトを成功に導いたのは、チームの献身と努力でした。
HatchEduに参加したきっかけは?
「HatchEduが参加者を募集していた頃、ちょうど社内の新規事業創出プログラムで似たような事業を検討していました。面白そうだと思い、キックオフ・イベントに参加しました。教育事業立ち上げコースのような起業支援プログラムは数多くありますが、今の仕事を続けながら既存の教育事業を支援できる教育プロボノコースのような機会はあまりありません。その意味で、HatchEduのプログラムの仕組みにも惹かれました。」
もともと教育に関心があったのですか?
両親はともに小学校の教員で、私自身も学生時代に家庭教師や塾講師をしていました。NHKの教育番組に携わった経験もあり、教育は身近なものだと感じていました。ただ、教育そのものというより、人の成長を支えることに関心があったと言ったほうが正確かもしれません。仕事でも、チームのメンバーが成長する姿を見ることに喜びを感じていました。
HatchEduでの「ISAKx」立ち上げプロジェクトは、どのような体制でしたか?
戦略的にも重要な新規事業であるISAKxの立ち上げには、UWC ISAKの代表理事である小林りんと、校長のRod Jemisonも参加しました。UWC ISAKにとって大きなプロジェクトだったため、オンライン・プログラムを担当する教員や、財務と人事を担当するスタッフとも連携しながら、プログラムの内容をすり合わせました。
今回お話を伺ったIidaさんを含む、HatchEduの教育プロボノコースの参加者3人が、UWC ISAKのプロジェクトに取り組みました。Iidaさんは新規事業の財務モデルの作成と立ち上げプロセスの管理を担当し、ほかの2人はそれぞれ営業・マーケティングと、システム構築およびUWC ISAKとの調整を担いました。その後、以前にUWC ISAKのプロジェクトに関わった経験を持つメンバーが1人加わりました。
チームでの仕事は楽しく、Iidaさんにとっては社外の人たちと関わること自体が新鮮だったといいます。メンバーは互いの強みや個性を認め合い、プロジェクトの進め方に迷ったときには相談し合えました。4人目のメンバーはUWC ISAKの組織体制に詳しく、プロジェクトが円滑に進むよう支えてくれました。
次々と生まれた提案
プロジェクトを終えての感想は?
「あの混沌とした状態から、よくこんな短期間で立ち上がったなと思います(笑)。最初から、この事業をやりたいという思いと、どう進めるかのイメージはありました。ところが、前提として決まっていることを確認していくと、ほとんど何も決まっていないことが徐々にわかってきて……
ただ、決まっていないことが多いということは、「こうしてみてはどうか」と提案できる余地が大きいということでもあります。私たちを信頼して任せ、提案を受け入れてくれる度量の大きさには驚きました。自分が提案したスケジュールどおりに、質の高いアウトプットを出さなければと感じていました。
また、学校を率いる2人のリーダー、代表理事と校長がこの事業を立ち上げたいという強い思いを持っていて、それに心から共感できました。何より自分自身が面白いと感じていたので、3カ月間、一緒に走り抜けることができました。」

教育機関と仕事をして驚いたことは?
衝撃を受けたことが2つあります。1つ目は、教育機関は営利組織ではないので、事業の目的が利益を上げることではないという点です。「こんな世界があるのか!」と思いました。
もう1つは、「得意・不得意があっていい」という考え方です。りんさんはいつも「自分にはできないことがたくさんあるけれど、ほかの人が補ってくれる」と言っていて、とてもポジティブなことだと感じました。
民間企業では、作業計画の作成やスケジュールの設定、メンバーへの役割分担といったプロジェクト管理のスキルが重視されます。ところが、UWC ISAKにはそのような形でプロジェクトを管理している人がいなかったので、本当に物事が進んでいるのか心配になりました。それでも、教員同士が支え合い、うまく回していく様子を見るのはとても興味深かったです。
情熱ある人たちとの出会いが、新たな挑戦への力に
プロジェクトにはどのくらいの時間を使いましたか?フルタイムで働きながらの参加は大変でしたか?
最も忙しい時期は週に5〜10時間ほど、軌道に乗ってからは週に2〜3時間ほどで、主に朝の始業前の時間を使っていました。忙しい時期は本業との両立が少し大変でしたが、許容できる範囲でした。すべてオンラインで進めたので、簡単にやり取りできたのも助かりました。
HatchEduに参加して、どんなことにワクワクしましたか?
情熱と熱意にあふれた人たちとの出会いです。小林りんさんもその一人ですし、キャリア・セッション(注:HatchEdu参加者向けの研修セミナーの一つ)で同じグループになった教育事業立ち上げコースの参加者2人もそうです。2人ともエネルギーと情熱にあふれていて、とても刺激を受けました。こうした人たちに出会えただけでも、HatchEduに参加した価値がありました。
ご自身にはどのような影響がありましたか?
世界の見方が変わったと思います。以前はビジネスの世界のことしか考えていませんでしたが、大学に戻ったり、起業したりと、さまざまな生き方があることに気づきました。
実は、HatchEduに応募するまでUWC ISAKのことを知りませんでした。でも、小林りんさんが強いビジョンを持ってUWC ISAKを立ち上げ、運営し続けてきた姿を見て、「こんな人もいるんだ、自分にも何かできる!」と思えるようになりました。本業でも、これまで考えもしなかった大きな新しい挑戦をしてみたいと感じています。
HatchEduへの応募を考えている人に、どんなアドバイスを送りますか?
強い目的意識がなくても、少しでも興味があるなら、ぜひ挑戦してみることをおすすめします。教育業界での経験や知識がなくても、違う視点やスキルで貢献できるかもしれません。私にとっても、慣れ親しんだ世界とは違う世界がひらける、とても刺激的な経験になりました。思い切って飛び込んで、本当によかったです。
UWC ISAKからのメッセージ
UWC ISAK 代表理事 小林りん
新型コロナウイルス感染症の世界的な流行によって、対面での教育が危機に直面するなか、この危機をチャンスに変えて、UWC ISAKらしい教育をオンラインで世界に届けられないかと、ふと思いついたのです。ただ、飯田さんのお話にもあったとおり、5月末の時点であったのは「アイデア」と「思い」だけでした(笑)。
このお三方のご協力がなければ、わずか3カ月でこのプロジェクトを立ち上げることは決してできませんでした。本当にありがとうございました。本校の教職員も、ビジネスの世界でプロジェクトがどのように進められているのか、またマーケティング・チャネルをどのように開拓できるのかについて、多くのことを学びました。改めて、心より感謝申し上げます!
