ネパールのルーツとProject Nepal
カルマさんは、母国ネパールと常に強いつながりを持ち続けてきました。2015年、8,000人以上の命が奪われ、国内のインフラの多くが破壊された大地震の後、カルマさんは行動を起こすことを決めます。
UWC ISAK Japanの在学中に、災害支援を目的として「Project Nepal」を共同で立ち上げました。プロジェクト・ウィーク中の緊急支援として始まった活動は、やがて現地の専門家や団体と連携した継続的なプロジェクトへと発展し、10年近くたった今も支援を必要とする地域を支え続けています。

バトンをつなぎ、さらなる学びへ

2017年に卒業したカルマさんは、Project NepalをUWC ISAKの後輩たちに引き継ぎましたが、その後もアドバイザーとして関わり続けました。その後トロントで生命科学を学び、新たな知識と視点を得ながらも、いつか故郷に戻って直接貢献するという目標を見失うことはありませんでした。
「トロントで暮らし、学んだことで、地域社会が豊かになるとはどういうことか、より広い視野で考えられるようになりました」とカルマさんは話します。「先進国の多くの人が当たり前だと思っているインフラや制度、施設が、人々がのびのびと生きられる環境をつくっていることを、身をもって知りました」
まかれた種:ファウンダーから学んだこと
UWC ISAKで過ごした日々のある体験は、トロント時代もその後も、カルマさんの心に残り続けました。在学中、カルマさんは、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社の創業者で会長であり、UWC ISAKのファウンダーの一人でもある増田宗昭氏の軽井沢の自宅を訪ねる機会を得ました。そこで増田氏の人生の歩みを聞き、地域の人々が集う場としての図書館の構想を知りました。この会話がきっかけとなり、カルマさんはTSUTAYAで、初めて本当の意味での公共図書館を訪れることになります。
「とても深く心に残りました」とカルマさんは振り返ります。ファウンダーの構想が生徒自身の体験と直接結びつき、何が可能かという考えの種がまかれた瞬間でした。
その種は、トロントでの大学時代にも育ち続けました。大学図書館を通じて充実した公共図書館サービスを体験したとき、すべてがつながったのです。こうした資源を利用でき、それが学びのあらゆる面を支えている様子を目にしたことで、故郷ネパールに同じようなものがあれば、どれほど大きな変化が生まれるだろうと考えるようになりました。この思いはカルマさんの中に残り続け、今の自分たちの図書館プロジェクトに直接つながっています。ワンフロアから始まった図書館は、今では建物全体へと拡大しつつあり、ネパールでは数少ない先駆けの一つです。


Sowers Action Nepalを率いて
現在カルマさんは、僧侶である兄弟のパサンさんとともにSowers Action Nepalを運営しています。2022年にカトマンズで設立されたNGOで、社会的に弱い立場にある地域の人々の教育機会を広げることに取り組んでいます。ただしカルマさんは、すぐにこう付け加えます。「Sowers Action Nepalの本当の創設者はパサンです。地震の後、すでに慈善活動に深く関わっていて、ずっと私にとって一番の刺激であり、道しるべです」
当初、カルマさんはどちらかといえば支える側でした。「でもパサンが病気になり、私が積極的に関わらなければならなくなりました。それ以来、ともに活動を続けています」とカルマさんは説明します。2年間のボランティアを経て、2024年に正式にリード・プロジェクト・コーディネーターとして加わりました。



活動は多岐にわたります。NGOはカトマンズにある前述の無料の公共図書館を運営し、子どもたちが本を読み、学べる場を提供しています。図書館に加え、高校進学のための奨学金プログラムも運営しており、現在、民族や宗教、背景を問わずネパール全土から選ばれた94人(女子44人、男子50人)を支援しています。プログラムでは学費と寮費、食費を全額まかないます。さらに学業にとどまらず、若者たちが主体的で責任ある市民へと成長できるよう、リーダーシップ・プログラムも始めました。
「子どもたち一人ひとりにとって、Sowers Action Nepalは単なる支援サービスではありません」とカルマさんは語ります。「機会への架け橋であり、自分の志は大切なのだと気づかせてくれる存在なのです」

リーダーシップ、コミュニティ、そしてUWC ISAKの価値観
NGOでの活動に加え、ネパールに戻ってからは、バグマティ州のSherpa Student Associationの会長にも選ばれました。シェルパはネパールの先住民族であり、少数民族です。ヒマラヤ地域に暮らし、独自の言語や文化、仏教の伝統を受け継いでいます。登山での活躍は世界的に知られている一方で、シェルパのコミュニティは社会的にも政治的にも周縁に置かれ、国の政策や機関に十分に代表されてきませんでした。
Sherpa Student Associationは、このコミュニティの若い世代を代表する団体です。学生や若者がつながり、教育やリーダーシップの面で支え合い、自分たちの文化の継承と人々の発展に積極的に貢献するための場となっています。「この役職では」とカルマさんは話します。「シェルパの学生やシェルパの人々のための機会を増やし、その声が代表されるようにし、より広く届けることに取り組んでいます。若いシェルパがリーダーシップを実践し、政治に関わり、ネットワークを築く場でもあります」
UWC ISAK Japanで学んだ価値観は、今も彼のあらゆる活動を形づくっています。「UWC ISAKでは、多様性とリーダーシップという価値観を教わるだけでなく、日々の生活の中で体現していました。時間がたつにつれて、その意味が自分の中でどんどん明確になっていきました。ネパールで私たちが取り組んでいる活動を見れば、UWC ISAKの理念とよく似ていることがわかるはずです」と彼は語ります。出身や背景を問わずネパール各地の生徒を支援するという意図的な包摂性と、未来のリーダーの育成に力を注ぐ姿勢。この奨学金制度のどちらの特徴にも、UWC ISAKが彼に根づかせたものが表れています。

UWC ISAKでできた友人たちは、今も変わらずカルマさんを励まし続けています。「UWC ISAKの卒業生仲間とは、今もとても仲が良いんです」とカルマさんは言います。「多くの仲間がネパールまで会いに来てくれました。ここで活動を続けるうえで、彼らの支えは今も大きな意味を持っています」
振り返ると、カルマさんにはすべてがひとつにつながっていることがわかります。日本とカナダで初めて出会った図書館は、誰もが資源を利用できるとき、地域社会が何を成し遂げられるかを教えてくれました。UWC ISAKで身につけたリーダーシップと多様性の価値観は、今、自分たちの奨学金プログラムやリーダーシップ育成プログラムに表れています。そして何よりも、兄弟であるパサンさんの志と献身が、道しるべと目的の両方を与えてくれました。これらの影響が重なり合い、今の活動を形づくり続けています。
カルマさんにとって、UWC ISAKに在学していた10代のころにProject Nepalを立ち上げてから、兄弟とともにSowers Action Nepalを率いる今に至るまでの道のりは、ひと続きの物語です。UWC ISAKで始まり、ネパールで今も続くその物語の根には、適切な支援があれば若者は境遇を乗り越え、自分の可能性を発揮し、地域社会に恩返しできるという信念があります。
