10周年記念

UWC ISAKの革新的なブレンディッド・ハウス(寮)

ユニークなブレンディッド・ハウスのシステムで境界線をブレンドする

ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパンのユニークな点のひとつに、革新的な住居システムがあります。本校では、従来の全寮制のインターナショナルスクールとは異なり、「性別によって生徒達を分離する」という常識にとらわれることなく、同世代の生徒とブレンディッド・ハウス(寮;性別などを問わず多様な生徒が生活を共にする寮)で生活する選択肢を提供しています。



UWC ISAKスタイルで再構築する学生寮

「他のほとんどの全寮制の学校では『Mixed (混合)』と呼ばれる寮の中であっても、男子生徒と女子生徒は異なる階に住んでいます。まだかなり分離されている状態なのです。」当時のUWC ISAKのパストラルケア(生徒ウェルビーイング)担当のディレクターで、ブレンディッド・ハウスシステムの導入に貢献したローラ・アールウッドは語ります。「でもISAKのブレンディッド・ハウスでは、男子部屋や女子部屋があるのと同じ階に性別を問わない部屋(gender nonconforming room)があります。区切りがなく、生徒たちはあちこちにいるんです。他校の寮とはかなり違います。」


すべての人のための場所を作り出すインクルーシブ・デザイン

UWC ISAKがインクルーシブであるための取り組みは、寮だけにとどまりません。その一例として、新規施設の施工計画には、ジェンダー・ニュートラルな1人用の個室のバスルーム(single-use bathroom)の導入が含まれています。こうした取り組みは、単に「LGBTQIA+のための寮」を作ることが目的ではなく、ユナイテッド・ワールド・カレッジの活動のミッションの重要な一部である、「すべての生徒がアクセスできる多様で包摂的な環境を育むこと」が目的であるとローラは強調します。


生活を通して学ぶ ー ブレンディッド・ハウスのもたらす影響ー

2019年に卒業したベネズエラ出身の生徒マーファーは、在学中ブレンディッド・ハウスでの生活を体験した一人です。彼女は、ブレンディッド・ハウスでの生活を通じて、異なる性別や国籍が織りなす豊かな視点と共に、根本的な多様性を日々体験することができたと振り返ります。


生徒たちが導く変革

ブレンディッド・ハウスの取り組みは、学校の寮のシステムが一部の生徒のアイデンティティに対応できていないと気付いたところから始まりました。ローラと前任の生徒募集ディレクターであるリンゼイは、すべての生徒が歓迎され受け入れられていると感じられるよう、システムの変革に力を尽くしました。


生徒のメンタルヘルスを最優先に

ローラとリンゼイは、異なる性別の生徒を一緒に住まわせることで想定されるリスクよりも、生徒のメンタルヘルスとブレンディッド・ハウスのシステムがもたらしうる恩恵のほうがはるかに重要だと考えていました。この提案は、信頼・透明性・オープンであることに基づいており、生徒の幸福に重点を置いたものなのです。


「理事会で性自認の問題を提起する際には、理事の多くが日本人であることに考慮しつつ、日本においてあまり知られていないアイデアや概念も紹介し、その過程で説明をしたり質問に答えたりする場面が多くありました。」ローラは振り返ります。さらにジェンダーの専門家をキャンパスに招き、新しい寮のシステムを評価してもらう中で、この取り組みの中で生徒をさらにサポートする方法についての貴重な知見を得ていきました。


ブレンディッド・ハウスシステムの始まり

2018年、最初のブレンディッド・ハウスがオープンしたことは、ISAKにとって重要なマイルストーンとなりました。開始当初は女子としての性自認をもつ生徒12人と、男子としての性自認をもつ生徒12人、合わせて24名の生徒をブレンディッド・ハウスに受け入れ、その後も需要の増加に伴ってブレンディッド・ハウスは拡張してきました。2022〜2023年度には、3つのブレンディッド・ハウスに52名の生徒を受け入れ、最大64名まで受け入れ可能となりました。
将来的にはさらに規模が拡大する可能性があります。「この数字は、来年度何人の生徒がブレンディッド・ハウスへの入居を申請し、保護者の許可を得るかによって変化するでしょう。」現在の生徒支援ディレクターであるクリスティーナ・ボーネルは言います。ここで重要な点は、ブレンディッド・ハウスへの入居を希望するすべての生徒にとって保護者の同意が必須条件だということです。


ブレンディッド・ハウスに対する生徒の声

これまでブレンディッド・ハウスに住んできた生徒からのフィードバックは、圧倒的にポジティブなものでした。2020年に入学したフランス出身の11年生 (高校2年次)のサーシャは振り返ります。「寮の申し込みフォームが届いて、選択肢にMixed Gender Houseがあるのを見た時、私は一瞬たりとも迷いませんでした。ブレンディッド・ハウスに住むことは、その時想像していたよりもさらに良い経験です。男の子たちとの共同生活の居心地は良く、むしろ男子と女子の間で、お互いにちょうどよい具合に折り合いをつけて行動しています。私たちは、相手を決めつけることなく、互いを受け入れ、サポートする環境を作りあげています。」サーシャの思いは、ブレンディッド・ハウス全体で共有されており、たとえ寮の中で意見の相違が生じたとしても、生徒たちはオープンな対話を通じ解決し、共に住む全員が心地よくいられる、そして尊重されていると感じられる場所を作り上げています。


UWC ISAKのブレンディッド・ハウスの未来

UWC ISAKのブレンディッド・ハウスの未来は明るくダイナミックで、常に変化する生徒たちのニーズに対応可能なものとなっています。このユニークな生活環境に興味を持つ生徒が増加する中、保護者の方々と常に連携し、事前にご理解とご承諾を得ながら、ブレンディッド・ハウスシステムは進化を続けていきます。

本校のブレンディッド・ハウスは、単にユニークな生活環境というだけではありません。このシステムは、あらゆるバックグラウンドを持つ生徒が健やかに成長していくための包摂的で受容的な環境を育むことへの学校のコミットメントの証でもあります。この取り組みは、従来の全寮制学校の寮の常識に挑戦するだけのものでなく、より多様で豊かな学生体験への扉を開くものです。


当校のブレンディッド・ハウスシステムは、私たちが多様性と包摂性を受け入れることで、環境と経験をいかに再構築できるかを示しています。より多くの全寮制インターナショナルスクールが生徒のニーズの変化に対応しようとする中、UWC ISAKのブレンディッド・ハウスモデルがイノベーションの実践例として参照いただけることを願っています。

UWC ISAKのブレンディッド・ハウスにおける様々な性別、文化、視点の融合は「教育を、平和と持続可能な未来のために人、国、文化を結びつける力にする」という本校の精神を体現しており、ブレンディッド・ハウスシステムは単なる宿舎に関する方針ではなく、そこに反映されているのはより良い世界を目指すUWC ISAKのビジョンそのものであるといえます。


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