生涯にわたるリーダーシップを学ぶことで、生徒達は社会にポジティブな変革をもたらすために必要なスキルを習得します。ますます複雑化する世界において、この学びはかけがえのないものとなります。一方で、必要なスキルを習得し活用することは容易ではなく、そこには一貫性と忍耐力が求められます。本校2年の生徒たちは、特別なリーダーシップ合宿を体験し、リーダーシップは実践であることを学びました。
本校でのリーダーシップ哲学とは
私たちの多くは、試行錯誤を繰り返すことによって成長していくことを学びます。言い換えれば、私たちは時に傷を負い失敗もしながら、貴重な教訓を学んでいるのです。失敗することは、人生において自然なことです。だからこそ、私たちはリーダーシップのカリキュラムに、失敗から学ぶ訓練を組み込んでいます。 リーダーシップ講師の鶴見泉先生は、失敗の中に大きな可能性を見出し、その可能性を引き出すために、生徒たちが物事の見方を変えることができるように指導しています。 リーダーシップは、私たちユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパンのアイデンティティの一部です。生徒たちは、責任を持ち世の中でいかに自分たちを導いていくのかについて学びます。また、自分の選択が他人にどのような影響を与えるかを考える能力も身につけます。1年次のクラスでは、「自分をリードする」「他者をリードする」のクラスで生涯を通じたリーダーシップの学習に専念しますが、2年次の生徒に対して泉先生は、文字通り生徒たちの人生を変えるような情報を提供したいと考えました。
2年次のリーダーシップ合宿に向けた準備
ISAKのイベントには、いつも見えないところで多くの人の手が加わっています。その結果、授業やアクティビティの取りまとめはもちろん、会場の予約やロジスティクスの調整、みんなの食事の準備も気づかないうちに終わってしまうことがよくあります。泉先生は、どんなに計画を立てて準備しても、リーダーシップ合宿の直前にはなかなか寝付けないそうです。
自己を律することでリーダーシップを学ぶ
“自分は何者なのか?”という問いは哲学者にも答えるのが難しく、その答えは常に変化し揺らぎます。世界中の10代の若者たちもまた、その答えを探そうとしています。小さな決断を積み重ねることで、不確かな状態から自己イメージが形成されていきます。本校では合宿期間中、生徒たちが自我を定義できるようにさまざまなツールや課題を提供します。雑念や誘惑など絶え間なくやってくる現代の私たちの生活の中で、自分が何者であるかを理解することは非常に難しくなっています。さらに、日々さまざまな思考が駆け巡る中で意識せず日常を過ごしていると、自分の内なる声に耳を傾けることが困難になります。 リーダーシップ合宿では、生徒が自由に物事を考えることができるように、自分自身を落ち着かせ安定させるためのスキルやテクニックを紹介しました。マインドフルネス、瞑想、またシンプルな呼吸法は、自由な状態を実現する上でとても効果的で、それによって自分自身や世の中についてより客観的に捉えることができるようになります。また生徒たちは、自分の中にある暗黙の偏見が文化やバックグラウンド、そして人生経験からも生まれることを学びました
リーダーシップ合宿は、通常授業では得られない貴重な学びを得る機会でした。自分の周りに変革を起こしたいという気持ちを、改めて強く呼び起こさせてくれました。
– Caleb (アメリカ合衆国 / Class of 2022)
何が重要で必要とされているのかを見極める
基礎固めをしっかりとできると、次に生徒たちには、自分が将来どんな人間になりたいのかを考えてもらいました。ポジティブな変革を起こすためにとても重要になるのが、ゴール設定です。目標を定めることは、その目標に到達しなかった場合失敗であるとみなされがちなため、怖いことです。私たちの大半は、失敗は悪いことであると信じて育ってきましたが、失敗は実は成功への足掛かりにすぎません。
– Michael Jordan
生徒たちは、誤ったマスを踏まない限り成功できない「ビープ・アクティビティ」を体験しました。その中で、チームとして失敗の度に収集した情報によってのみ、正しい道を見つけ出すことができました。このアクティビティは、人生には目標に至るさまざまな道があり、それは必ずしも直線ではないかもしれないが、十分な決意を持って努力すれば、目標は最終的に達成できることを教えてくれるものでした。
不安な場面でアクションを起こす
正しい情報と実行計画を備えた生徒は、不安な場面に直面し行動ができなくなると、自分のゴールを見失います。紙面上では、次の行動はとてもシンプルで、台から降りてボールにタッチするだけです。台とボールは地面から10m近く離れています。教育で素晴らしいことの一つは、楽しいアクティビティであってもその裏に実際の目的と学びを潜ませることができる点です。
先の事例では、ゴールはボールにタッチすることではありませんでした。実際のゴールは、不安を認識しながらも何が重要で必要なのかをベースに、目的意識を持って選択していくということでした。往々にして私たちは、感情に流されて、目的に沿った道を選ぶことを忘れてしまいがちです。例えば、台から降りないという選択肢もその一つです。突然やってくる出来事自体をコントロールできなくても、その出来事にどう反応するかについては自分でコントロールし、選択することが可能です。
仲間をより深く理解し共に学ぶことを楽しみながら、人生を通してとても役立つリーダーシップスキルを新たに身につけることができました。
– Mailys (トーゴ – フランス – アメリカ合衆国 / Class of 2022)
他者と連携する
生徒たちが自己を理解し将来なりたい姿がより明確になると、次に教えるのは、私たちはそれぞれ一人では存在しえないということです。リーダーシップ教育では、自分達はコミュニティの一員であり、他者との関わりが非常に重要であることを教えます。生徒はディスカッションを通じて、人にはそれぞれ異なるニーズや意見、物事の見方があることに気づきます。他者の感情やニーズを理解し、意見が対立しても責めたり非難したりするのではなく、理解し協力しようと努めることで、多様性を強みとして活用することを学ぶのです。
たった2日の合宿を通して、2年次の生徒たちはお互いにより深いレベルで向き合えるようになりました。 お互いに対する先入観が、理解と思いやりに置き換わったのです。生徒たちは、仲間の考えを聞くことで自分の見方を変えるようになりました。
最高の経験が起こるのは、崖っぷちや困難な状況にあっても自分を取り囲む人々が常に支え、成功に導いてくれることを実感した時なのです。
– Juan (コロンビア / Class of 2022)
授業を超えたリーダーシップ
生徒たちは、表面的なレベルではなくより深く仲間を知ることで、お互いの交流を深めていきました。リーダーシップ教育の副次的な効果として、生徒たちは仲間との絆をより強く感じるようになったのです。合宿中に始まった会話は、焚き火をしている間でも、テントの中でも、そして生徒たちがキャンパスに戻ってからも続きました。
リーダーシップ合宿では毎回、旧交を温めつつ新たな友情が育まれます。合宿最後のアクティビティは、円陣を作り感謝の気持ちを表しながら、自分の弱さをさらけ出し親密な時間を共有します。